2009年03月01日

今朝の天守閣

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 起き抜けに、こんな夢を見た・・・。

 もう随分と昔、二十代も前半の頃、バイト先の友人のつてで、あるピアノ教師と知り合いになった。その人は私より4つ年上で、フワフワ・クルクルの髪を後ろで束ね、やや大きめのリボンで結んでいた。服装は、ヒラヒラの付いたブラウスが多く、それに合わせたやや長目のスカ−トを纏っていたと思いねぇ。ブラウスのボタンを一つ、多目に外しているのがアクセント!
 性格が又、素晴らしく、決して大きなお屋敷住まいではなかったけれど、振る舞いは ”マリ−・アントワネット ( 話したことねぇけど ) ” のそれ、だったのである。少なくとも我々の前では、そう振る舞っていた。まんま、の ” 女王 ”。今風で言えば ” KY ” で、同性からはすこぶる評判が悪かったのです。タレントのスザンヌ? あれをもうチョット小柄で上品にした様な、美人でしたとさ。
 よく、お茶しているところへ呼び出されたり、酒付きのジャズ・コンサ−トなどへ連れて行って貰った。本人は、シンガポ−ル・スリングを飲み私は、訳が分からないカクテルを置かれる。
『 それ、どんな味なの?』
と、私のグラスを取り、わざわざ私の飲み口を探し、ニヤリと微笑みながら啜る。
『 んふ・・美味しい・・』
返しながら、自分の飲み口を私に向ける。私は、ポカンとしながら眺めていた。
 『 アナタ、もうチョット○○○しなっさいよ 』
が口癖で、そう言いながら鈴の様にコロコロと笑う様を見るのが楽しくて、金も掛からないのでホイホイと誘われていたのであった。
 彼女の写真を貰った事もあった。” 生写真 ” である。
今の様な携帯も、デジカメなんかも無かった時代だ。当時、私たち世代の憧れの的だったBMWの、そのボンネットに寄り掛かっているところであったり、背筋を伸ばしてピアノの前に座り、それを反対側から捉えるファインダ−に向かい、普段では有り得ない優しい笑顔の彼女がいた。
 彼女は、ピアノ教室の他に、イベントに向けて営業を掛け、芸名を名乗った名刺を持って忙しく駆け回っていた。
『 あの時の○○はねぇ、35 ( 万 ) だったのよ。今度の○○は○○だからぁ、40から50は抜けるかな?』
てな感じで、若造の私には遙かに ” 大人 ” に見え、目の当たりにする姿以外、裏の実体は一切、謎で想像の付かない、文字通りの ” 女王 ” なのであった。
 田舎者の私は、貰ったその写真の意味なんて当然、分からず、” オカズ ” にもならない中途半端さから、飾りもせずに引き出しの奥へと仕舞い込んでいた。他のお姉さんと、一緒に写真に収まった事はあったが、自分の過去の写真をホイと渡す、そんな動機が分からず、想像も付かなかったからであった。
 こんな事もあった。
急な電話で・・・
『 チョット、お時間ある?・・・うん・・・クルマで来て下さるかしら・・・そう、じゃ、待ってるから 』
聞くと、親戚のオバさんの旦那に ” 浮気 ” の嫌疑が掛かっているらしく、その怪しい動向を追跡調査して欲しい、と言うのである。這々の体で、ちゃらんぽらんな支度で駆け付けた私は、玄関先でそのオバさんに頭を下げられ・・・
『 ゴメンねぇ、アナタしか頼める人いないのよ!』
と、先生にウインクかまされた日にゃ、これは断る訳にはいくまいて。なんか ” 探偵物語 ” みたいで面白そうだったし、ハ−ドボイルドの血が騒いだ。取ってくれたざる蕎麦を馳走になりながら私は、” フンフン、それで?”、と先生の段取りに聞き入ったのである。
 ドライビングテクニックの限りを尽くし、付かず離れずでオジさんの白いセダンを追跡した。横では先生が、鍔の大きな帽子を被り、これまた大きなグラサンでカモフラ−ジュしながら、片膝を立てている。大きく後ろを振り返ったり、前方を覗き込む度、スカ−トの裾から真っ白な太股がチラリと顔を出す。
『 大丈夫・・・[ ゴキュッ!] み、見つかってないと思いますよ 』
私は、2本目のシフトレバ−を握りしめ・・・イカン! 仕事中だ!! ある時、教室で ( 私は習っていた訳ではないが ) 複数名でワイワイとした事があった。私の当面に座る先生は、意識してかそうとは知らずか、スカ−トなのに ” M膝 ” を抱えている。当然ながら、中の純白の下着が丸見えな訳です。ま、こんな訳で・・・
[ 趣味なんかな? この女 ( ヒト ) ]
と、こんな感じの初なナチュラル・ガイだった私。
 ・・・あぁ、そんでオジさん、とある住宅の前の路上に駐車。いそいそと中へと消えたのである。その場をやり過ごし、少し離れた路上にこちらもクルマを停める。夏、真っ盛りの車内は、ウインド−を開け放っているとはいえ、エンジンを切ると噎せ返る様な暑さだ。熱気よりも強烈な先生の香水で、私は意識を失いそうであった。
 先生は、持参の扇子 ( 団扇ではない ) で、その香をこちらへ寄越す。たまに、[ 暑いでしょ? ホラ!] なんて言いながら、ノ−・スリ−ブの脇を見せながら私の頭上を扇ぐ。心拍停止の寸前で・・・
『 あっそうだ、証拠、撮っとかなくちゃね!』
おもむろに1眼レフを取り出し、ヒ−ルを脱ぎ捨ててフェアレディの助手席に膝で立った先生は、もう ” これ以上ない!” っちゅうくらい背中と腰をS字に反らせ、オジさんのクルマとその家とに向かい、シャッタ−を切った。私のモニタ−は既に、フラット・ラインを描いていたのである。煙草を2・3服した後、一向に変化の無い現場での張り込み飽きた私達は、その場を離れたのであった。
 『 取り敢えずそこの写真、撮って来たからさ、オバさん・・・ね?』
しきりに頭を下げるオバさんに私は・・・
『 いやあの、ただの ” 風景 ” でしかありませんから・・・なんの証拠にもならないかも知れま・・』
『 いえぇぇ・・いいんです! もう、証拠を掴みました。これでもう・・・ぐうの音も出ないほど・・』
オバさん、取り付く島がない。さすがの先生も・・・
『 coji君の言う通りよ、オバさん。これははね、” 一応、撮ってきた ” ってだけなんだから、ね?』
テンパッたオバさんの耳には多分、この台詞は残っていないだろう。
 『 あ、これ些少ですが、お手間掛けたんですもの、お受け取りになって 』
封筒に入った5千円を、私に差し出した。
『 いえ、こんな、クルマ転がしただけですから、ボク 』
プロではないし、断る律儀さがこの頃はあった。
『 あ、いいのいいの、貰っときなさい。coji君、” イイ仕事 ” したんだから、ね?』
と、ウインクする先生に押しきられ私は、日当を手にしたのだった。
 とまぁ、こんなお姉さんが居た訳なんであるよ。
その後、何度か電話で・・・
『 ねぇ、ヒマ? 軽井沢、走りに連れてってよ。アタシのクルマ、運転して?』
なんて事が、あったなぁ・・・。そんな時、決まって先生は、ステアリングを握る私の頬を、横から指で突き含み笑いしてたっけ。
 しかし、その先生とは、そこから先への進展は無かったのである。女としては間違いなく ” 第1級 ” のレベルに属するが、漂う雰囲気に何か危険性を察し気圧されていた、と言うのが実態だ。
 暫く連絡が途絶え、こちらからも敢えて取ろうとはしなかった。
風の噂に、引き合わせてくれた友人とその後、” ドロドロの修羅場を演じる関係 ” となり、仲間内で評判となった後、糸の切れた凧の様に結婚してしまった。かなり後になって、彼女の御母堂と話す機会があった。
『 あ、ご結婚されたそうで、おめでとう御座います 』
『 そうなのよ・・・” ワタシ、結婚なんかしないワ ”、なんてあの娘、みんなにふれ回ってたじゃない? 本人も、恥ずかしくて言えなかったんじゃないかしら。アナタも、色々と引きずり回しちゃってゴメンなさいね?』
私を、単なる ” 子分の一人 ” とでも聞かされていたのだろう。そう言って御母堂は、恐縮していたのであった。
 当時、私は、今からは想像も出来ない様な ” 優男風 ” であったので、3つ4つ離れたお姉さん方には人気があった。尤も、良い ” アシ ” として使われていたきらいはあったが、深い仲になった何人かからは・・・
『 アタシね、coji君とが ” 最後の恋愛 ”、だと思う。そんな気がするの・・・イヤン、重く考えないでね?』
と、言われた。当時は、” んなモン?”、くらいにしか考えなかったが、別れてから皆、一様にそそくさと結婚してしまったのだから、言わずもがな。今となって思い出してみると、ほろ苦さが胸を覆う。ふ・・イイ時代だったよなぁぁ・・・

 あぁっ!
” 夢 ” の話だったな。ま、そんな女 ( ヒト ) が居たと思いねぇ。
 ” 今の私 ” が、” 当時 ” のまんまの先生の横で、ピアノに対峙している。甘い吐息と共に、先生が言う。
『 アラ・・・” 心ここに在らず ”って感じじゃない。どしたの?』
和音を弾きそびれた私の手の甲を、先生の細い指がなぞる。
『 す、スイマセン・・・練習不足で・・・』
『 そう?』
先生はそう言うと、ブラウスのボタンを2つ、外した。
『 暑いわね、この部屋・・・』
嫌な汗が背を伝う。
『 どこ見てるの? 気になるワケ?』
『・・・』
先生の指は、” 二本足 ” で私の腕を辿り、鍛えた上腕の辺りをひと撫ですると、おもむろに下がった。
『 ひぁっ!・・・』
『 ” 動き ” が悪いぞぉ? ” ここ ” と違ってぇ 』
円を描く・・・。
『 せ、センセぇ・・・そんなことをしたら、て、 ” テポドン2号 ” が・・・』
『 ” テポドン ”? それなぁに? んふ・・なぁにかなぁ?』
当時の先生が、そんな物を知る由もない。” 円 ” が二拍子になる。
[ こちら管制、秒読みに入る、どうぞ!]
[ 総員、配置に着いた、どうぞ!]
私の中の、普段は小さな ” 影虎 ” が今は、天守閣で ” 毘沙門の旗 ” を振っている・・・。
『 だ、ダメです、殿ぉ・・・。お止め下されぇ! お止め下されぇぇぇ!!』

 発射こそしなかったまでも、この様に淫靡で強烈な朝を迎えたのである。曇り空だし・・・日記なんて書いちゃったよ・・・。
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posted by coji at 13:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記